2021年08月29日

二兎を追うことについて

これまで「二兎を追う」ことはよくないとされてきたし、欲張っているとろくなことがないように言われてきた。それは「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざからだ。調べてみると、













「二羽の兎を同時に捕まえようとする者は、結局は一羽も捕まえられないということからいった西洋のことわざ。二つの物事を欲ばってどちらも失敗したり、中途半端に終わるものである」とのこと。














しかし、先日読んだ本で、これからのビジネスでは「二兎を追う」ことが必要だと書かれてある本があった。それは




『両利きの経営「二兎を追う」戦略が未来を切り開く(チャールズ・A・オライリー著)』













内容は二兎を追うというより、二つの企業活動を同時に行わなけばならないということ。それは「探索」と「深化」。それぞれどういうことかと言うと













P6:なるべく自身、自社の既存の認知の範囲を超えて遠くに認知を広げていこうという行為が「探索」である。(中略)一方、探索などを通して試みたことの中から成功しそうなものを見極めて、それを深掘りし磨き込んでいく活動が「深化」である。













なるほど。まだまだ充分とは言えないが、我が社はこの「探索」しかできていないような気がする。「探索」をするけども、「探索」しただけで終わってしまい、その検証や試験的活動が出来ていない。













それを分かりやすく整理するためのフレームワークも書かれてあったので下記に紹介したい。














P10:縦軸に「これまで事業を展開してきた既存事業か新規事業か」を、横軸に「これまで用いてきた組織能力を使うか、それとも新しい組織能力が必要か」を置くことで四領域に分け、自分たちが目指したい方向性や潜在的な競合他社の可能性を探るのである。













つまり「探索」と「深化」を具体的に可視化して、自社のポジションを明確にした上で、限られた少ない経営リソースを効率よく配分するということだろう。













いくら「探索」できていても、この「深化」に対する活動がなくては、何の変化も成長も期待できない。












私が思うに、この「探索」にはマネジメント力、「深化」にはリーダーシップが求められると思う。












P169:「両利きの経営」のリーダーたちは、優れたマネジャー且つ優れたリーダーでなくてはならない。












ここに分かりやくマネジメントとリーダーシップの違いが書かれてあった。













P169:マネジメントは現状を維持し改善する組織内に浮上する多くの「間違った」考えを回避するのだ。しかし、リーダーシップをうまくとっていくには、隅々まで見渡し現状を不安定にさせることもあるが実験を行っていかなくてはならない。













続いてこんなことも書いてあった。














P307:研究結果によると、より多くの資源を持ち、激しい競争にさらされている企業にとって両利きの経営がより役立つのは不確実な状況に置かれているときだ。













まさにコロナ禍の今が不確実な状況ではないだろうか。













最後に、私達が肝に銘じて置かなければならない言葉を紹介したい。














「失敗する組織はたいてい過度に管理され、あまりリーダーシップが発揮されていない」













逆にリーダーシップを発揮しなければ管理(マネジメント)ばかりが増えて、成長を鈍化させてしまうのだ。特に最近ではガバナンスやコンプライアンス、ESG経営が強く求められており、管理が重たくなりがちなので注意したい。

 
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