一)経営について勉強したり、戦略について議論したりするときに、安く売ることは誰でも出来るし、安易で短絡的で能力の低い選択のように言われることが多いが、私は決してそうとは思わない。確かに、一円でも高く売ることができるのは能力かもしれないが、継続できないと全く意味がない。
二)高く売れれば、その分だけ儲けも増えるが、そこに高く売れる付加価値がなければ、単なるぼったくりか、たまたま偶然タイミングがよかったか、買い手の目が節穴だったいうことになる。どちらにせよ長く続くわけがない。
三)そういう点において、仕入れや加工、仕組みや社員教育を工夫して、計画的に安定した収益が得られるのであれば、安く売るというのは「三方善し」の立派な戦略だし賢い経営だと思う。でもそれは高く売るよりも、もっと難易度が高い戦略だ。
四)そこで、イタリア料理を他社が追従できないくらい超低価格で提供しながら成長しているサイゼリヤの創業者が書いた本『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れるのがおいしい料理だ(正垣泰彦著/日本経済新聞出版社)』を読んでみた。私がノートに書き留めた一部の言葉を紹介したい。※印は私の勝手な所感。
五)P22:絞り込んでメニューを提供すると食材ロスが減り、作業効率も良くなる。無駄を省くので利益もドンドン出る。(中略)無駄をそぎ落とすことでお値打ちな商品になるからお客様に喜ばれて売り上げも最終的に増えるので、初めに安売りありきではないのだ。※凡人は先に安売りしてしまう。
六)P60:適正な利益を確保するという意味で、私が創業時から重視する経営指標が「人時生産性」だ。「人時生産性」とは1日に生じた店舗の粗利益を、その日に働いていた従業員全員の総労働時間で割ったものだ。※ここで大切なのは分子が売上ではなく粗利益ということ。うちも同じ指標を重視している。
七)P70:瓶ビール1本とか玉ねぎ1個あたり数円安く仕入れても、削れるコストは知れている。そんなことに頭を使うよりは「今、2人で行っている作業を何とか1人でできないか」など最大のコストである人件費を削ることを考えるほうがよっぽど生産的だ。※建設業も同じことが言えるが職人気質はこれを避ける傾向がある。
八)P77:コスト削減というと、ある支出の中からムダを見つけて、それを減らしていくというパターンが多いが、それよりも支出額を決めて、それ以上は絶対に使わないようにした方がコスト削減は進む。※つまり予実管理を徹底しろということ。私が一番苦手とするところだ(苦笑)。
九)P112:「この人、急に変になったの」と心配されるくらいに大きな目標を持つのが、ちょうどよいと思う。そうすれば、自分より優秀な人材が、あなたや仲間の夢をかなえるために力を貸してくれるはずだ。※私は目標は現実的な外向きの目標と挑戦的な内向きの2つの目標があった方がいいと思う。
十)他にもたくさん紹介したいが、ぜひ原本の購読をすすめる。多くの経験則から裏付けられた原理原則や指標が、惜しみなくたくさん述べられており、とても勉強になる。安く売って儲け続けるには高い能力が求められるのだ。
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