一)先日、いつもお世話になっている米子の『ヘルスケアアパートメント祇園庵』の職員さんから頂いた本「いかに人物を練るか(安岡正篤著/致知出版社)」を読んで、改めて日本的経営及び日本的な生き方、働き方とは何かを考えさせられた。
二)安岡正篤先生といえば戦前戦後の右翼的な哲学者、思想家といった印象を持たれている人が多いと思うが、基本、陽明学や禅、武士道、神道など日本古来の精神、文化や東洋思想を研究されて、当時も現在も政財界に大きな影響を与えた御方だ。
三)本の内容は禅、鎌倉武士、道元、宮本武蔵、山鹿素行、副島種臣など幅広く時代をまたがって書かれており、主軸は日本的精神というテーマに一貫されている。初めて見る熟語や知らない言葉、古語などがたくさんあって、片手にスマホがないと読み切れなかった(苦笑)。
四)現代の生き方、働き方と比較しながら読むと、忘れてはならないことや大切なことが見えてくる気がする。なんでもかんでも新しいものが「正」のようになびく現代人には、なかなか響かないかもしれないが、少なくとも高みを目指す者にとっては心の指針になりうる。
五)「よろず依估のこころなし(宮本武蔵『独行道』)」。これは何事においても依怙贔屓してはならないという意味だが、仕事や人間関係も同じで、依怙贔屓をされる人は強欲に見えるし、する人は人格が低く見えるので双方にとってよくない。
六)「神仏を尊み、神仏を頼まず(宮本武蔵『独行道』)」。現代ではこの真反対で神仏を尊まず、神仏に頼む人ばかり。たとえば正月や七五三、地鎮祭や法事でしか手を合わさず、そのほとんどが形骸化している。これが親子関係にも影響していると思う。親を敬わず頼んでばかり。
七)「縁尋機妙(えんじんきみょう)」。これは良い縁がさらに良い縁を尋ねて発展していく様は誠に妙なるものがあるという意味。商売も同じで、顧客や取引先、パートナーも良い御縁が良い御縁を招く。でもこの逆もあることを肝に銘じておきたい。
八)「多逢聖因(たほうしょういん)」。良い人に交わっていると良い結果に恵まれるという意味だがこんなことは誰でも知っていると思うが、この良い人と出会うのが難しい。いや決して難しくはないが、ただ会おうと行動していないだけだ。新規開拓も同じことが言える。
九)「人間は、できるだけいい機会、いい場所、いい人、いい書物に会うことを考えなければならない」。この言葉は生き方、働き方すべてに通じる言葉。そのために普段どれだけ意識して心掛けているかで大きく差がつくと思う。
十)この度、この本を読んで日本古来のいわゆる達人と呼ばれた先人や、偉業を成し遂げた偉人、国のために命を惜しまなかった武士や軍人の生き方、働き方を知り、現代の日本人は忘れたものや失くしたものがたくさんあると思った。
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